クッパpresents 『我が青春~俺が愛し、愛された3DO~』 第4話
【第4話】ジャンルなんて言うのは信じるな
~前回のあらすじ~
ジュラシックパークのヒロインは使えないデブだった。
ウェイ(略)やジュラシックパークに精神的にズタボロにされていた幼少期の俺にとっては、3DOで遊ぶのは限界が近づいていた。
だが幼少期とは言え、俺にも意地があった。
そう、未だに3DOのソフトを一つもクリアしていないのだ。ゲーマーを自称していたのに、これ程の屈辱は無かった。
しかし、どれもこれも人が死んでいくので怖いソフトばかりだった(ここは本能には逆らえなかった。)。
そこでまだ遊んでいないソフトがあったんだ。
それこそが『チキチキマシン猛レース』だった。
再放送で見た事があったのだが、11台のスーパーマシン達がハチャメチャレースを巻き起こす、アメリカのカートゥーンアニメだ。
実を言うと、俺はこのアニメが大好きだった。毎回毎回ブラック魔王とケンケンが起こす悪だくみが大好きだった。
それに「このゲームなら人は絶対に死なない!!」と言う絶対の自信があったのだ。
ゲームのパッケージには表も裏もチキチキマシンの絵が書いてるだけで、内容は一切書いてない。
逆に心が躍る。おもちゃ箱を開ける子供の気分でテンションは上がる一方だった。
早速本体にディスクを入れ、起動させる。
3DOを骨までしゃぶろうと頑張っていた俺にとっては、途方もないロード時間も、もはや苦では無かった。
……タイトル画面すら無く、いきなりゲームが始まる。
ワクワクさせるハズのOPやタイトル画面までカットするとは、このゲームもしかして凄いゲームなのでは?
躍る心を落ち着かせながらゲームをスタートさせる。
すると、テレビ版のOPを彷彿とさせるムービーが流れ、軽快な主題歌と共に出場するマシンの紹介が始まる。
恐らく邪魔役のブラック魔王は選択出来ないので、この10台のマシンでレースをするゲームなのだと瞬時に理解する。
ちなみに俺は3番のドクターHのマジックスリーが大好きだった。もう頭の中はマジックスリーの科学忍法を使って全てのマシンをごぼう抜きする事でいっぱいだった。
そしてキャラ選択画面に移行した。いよいよ始まるぞ!!チキチキマシン猛レース!!
ナレーター「さぁ!レースが始まるよ!!10台のマシンから2台を選んで、バッチリグランプリマシンを当てようね!見事予想が的中すれば、時間さえも飛び越えるドライビングカードをプレゼントするよ!」
えっ?このゲーム、レースゲームじゃねぇの???
まさかの展開に俺の脳内は早くもメチャクチャだった。
えっ、予想?えっ、これ競馬みたいなトトカルチョゲーなの?
どう言う事なんだ…チキチキマシン【猛レース】なのにレースじゃないなんて……
わかりやすく言えばマリオカートってタイトルなのに、レースを眺めてるだけだなんて………
何なんだよ、この「友達の家に遊びに行ったら兄貴が居て、友達と兄貴がやってるドラクエを眺めてるだけ」みたいな状況…………
とりあえずレースを見てみよう。ベットはもちろんマジックスリーと、その次に好きなポッポSL。
ブラック魔王にはもちろんベット出来ない。原作でも悪役だし、毎回最下位なので当然と言えば当然。
レース自体はフルCGで描かれる、原作さながらのレースを眺める事が出来る。
これはこれで面白い。原作の雰囲気をほぼ完全再現、しかも声優は可能な限りオリジナルキャストを使っており、今は故人となってしまった名優、野沢那智氏のナレーションをはじめ、大塚周夫氏のブラック魔王も完璧に再現。
もしかしてこのゲーム凄い面白いのでは?!
3分程のレースが終わり、予想は見事ハズレ。優勝はハンサムV9のキザトトくんだった。
あー、ハズレちゃったかー。この後どうなるんだろうなー。
キャラ選択画面に戻っていた。
無慈悲にも、どうやら予想を的中させるまでは一切他の事は出来ないらしい。
…こうなれば意地でも当てるしかない!!!!
~数時間後~
当たらない。
一向に当たらない。
レース結果は完全にランダムなので、運が悪いとこうなる。
面白いかもと思った気持ちなんて言うのは、第5レースぐらいで粉々に砕け散っていたのは言うまでも無い。
スキップ機能?そんな便利なモノがこのゲームにあると思ったら大間違いだ。
そしてそこから更に数時間後、遂に歓喜の時が!!
ベットしていたマジックスリーがレース後半で特殊能力発動!!この展開は勝ちパターン!!行ける!!行けるぞ!!!
そして見事マジックスリーが優勝!!やった!!勝った!!予想的中だ!!
長かった闘いもこれで終わったんだぁ!!
ナレーター「見事的中!おめでとう!3番のドライビングカードをプレゼントするよー!」
そして掲げられる3番のドライビングカード。
その周りには、残り9個はドライビングカードが入りそうなスペース。
…全部、当てろと……言うのか………
2/10…つまり20%の確率を10回も当てろと言うのか……外れると3分ぐらいのムービーを見せられる拷問を………あと9回も…………
あ、いや、待てよ。今3番はカードをゲットしたから、残り9枚、つまり2/9。
次に当てれば2/8、その次は2/7…
これは何とか行ける気がしてきたぞ!!うん!!
よし!次のレースだ!!次は4番のクレイゼルスポーツに賭けるぞ!!
ナレーター「優勝は3番マジックスリー!!」
お前はさっき優勝したじゃねぇか!!!!
レースの神は平等だった。カードを持ってる選手でも、問答無用で優勝する。
2/10は覆らないのだった。20%の確率は上がることが無いのだ。
これ、残り1台になった時とか本物の地獄が待っているんじゃないかと恐怖を覚えたのは言うまでもない。
気を取り直して次のレースだ!俺は4番と6番に賭けるぜ!!
ナレーター「優勝は何とブラック魔王ー!!」
2/11だった。
ベット出来ないマシンが優勝してんじゃねぇよ!!!
ベット出来ない=ハズレ確定レースまで存在する地獄のレース。
ヒントも何もありゃしない。全ては運否天賦。そう、己の運以外は何も必要ないのだ。
約18%を如何に早く引き当てるか。必要なのはそれだけだ。
…まるでマインドシーカーじゃねぇかコレ!!
…もうレース(の予想)なんてやってられるか!!
俺はこの時空さえも飛び越えれるドライビングカードを使って大冒険の旅に出てやるからな!!
レースモードを中断し、ドライビングカードを使ったアドベンチャーモードへと移行する事にした。
ドライビングカードを使った夢の大冒険が、俺を待っているに違いない!!
子供ながらにそんな事を考え、クソの様な運ゲーから目を背け、楽しい世界へと旅立った。
そこに待っていたのは、更なる地獄だった。
~続く~
著者・クッパ
林田 藍助
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