クッパpresents 『我が青春~俺が愛し、愛された3DO~』 第1・2話

‏まえがき

呑んでる時にクッパさんが3DOの楽しい話をしてて面白かったので形に残したいと思い、無理を言って書いてもらいました。ネカフェでじっくり書いて頂いたようです。ありがとうございました。

記事をアップしたのは僕ですが僕自信の体験談ではないので僕には3DOの事は聞かないでください。
何も答えられません。
ていうか現物みたことありません。
みてみたいです。

林田藍助

 

↑クッパ氏(2016年秋頃、コンバットライブス外ロケにて。めっちゃ元気。)
 

 

これはteamMVTのメンバー、クッパ氏の実話である―――

 

 

 

クッパpresent
我が青春 ~俺が愛し、愛された3DO~

 

 
【第一話】出会い

ファミコンの大ヒットから数十年。今や家庭に1台と言っても言い程に普及してきた家庭用ゲーム機。
アーケードの興奮が家でも遊べる、または家庭用の特徴を活かした、アーケードには無い様々なソフトが世に出てきた。
ファミコンを筆頭に栄華を極めたゲームハードが世に多数存在する陰で、生存競争に敗れたハードもまた多数存在する。
あえて悪く言うなら、所謂「負けハード」である。

そんな歴史の裏に埋もれてしまったハードでも、未だにプレイを続けている御仁もいるハードも山のようにある。

…少し昔話に付き合ってもらいたい。俺が愛し、そして俺を愛し、後の人生を変えてくれた…あいつの事を。

当時の俺は小学生だった。
その頃も俺は今と変わらず、時間があればゲームばかりしていた。
ファミコンにスーファミ…それこそ学校から帰ったらすぐに電源を入れて、親にゲンコツされるまで続けていた。

そんな俺を見ていた祖父から、衝撃的とも言える言葉が飛んできたんだ。

「おじいちゃんが新しいゲームハード買うたろか。」

小学生にとってゲームハードは非常に高価なモノ。
新しいハードなんて誕生日とクリスマスとお年玉のプレゼントを全部ぶち込んだ上に翌年の誕生日も何もなしを覚悟しないと買ってもらえないモノである。
そんなものをたった一言で買おうとするなんて、ウチのジイちゃんってスゲー!!ジイちゃん大好き!!となるのは当然だろう。
買って買って!!と言うと、ジイちゃんは嬉しそうに「じゃあ今電気屋に電話するから待っとけ」と席を離れた。
当時はセガサターンが発売する直前だったのだが、そんな事は小学生にわかる訳が無く、もしかしたらお爺ちゃんは凄い人だから、発売前のセガサターンを持ってくるのかも知れない!!凄いや!!なんて思っていたのである。

……今思えば「電気屋に電話」の時点で何かおかしい事に気付くべきだったんだ…。

ジイちゃん曰く、数日中には電気屋が持ってくるとの事だったので、俺はその日を今か今かと待ち望んでいた。
学校から帰ると「電気屋さん来た!?」と開口一番に聞いていたぐらいだ。

そして運命の日が来た。
家でスーファミの餓狼伝説をしていたら、玄関のチャイムが鳴った。
出てみると、電気屋さんだった。
俺はそれはもう文字通り飛んで跳ねての大騒ぎ。我が家に新しいゲームが来た!!それだけで満足だった。
電気屋さんが「社長に頼まれたゲーム、持ってきてあげたよ。」と満面の笑みで巨大な箱を取り出した。

大きい…!!そして黒い…!!凄く黒い!!何だコレ!?メガドライブじゃないぞ!?

それがあいつ……パナソニック製の【3DO REAL】との出会いだった。

今思えば、電気屋さんの満面の笑みは「不良在庫を定価で処分出来た事に対する抑えきれない笑い」だったのかも知れない。


 
【第二話】海の向こうから来たアイツ

電気屋さんが着々とセッティングしてい
く黒い塊。

何なんだコイツは…カセットは!?カセットはどこに挿すの!?

と言うかコイツCMで見た事あるぞ!?確かスパⅡX(スーパーストリートファイターⅡX)が出来るすっごいハードやぞ!?

などと、頭の中は相変わらずのお祭り状態。

もう既にスパⅡXの事しか考えていない。家で好きなだけスーパー頭突きをぶっ放せる事への快感しか頭にない。スーパー頭突きは麻薬である。

そうこうしている間に組み上がった黒い塊こと3DO。

比喩表現では無く、普通にデカい。非常に邪魔なレベルのデカさである。

ついでにコントローラーもデカい。何なんだコイツ。

電気屋さん曰く「海外で人気やから、外人サイズやねん」だそうだ。

今思うと、海外で人気とかそんな大嘘よく付けたなと。子供じゃなかったら訴えてるところだぞ。

しかしハードはあってもソフトが無い。

これじゃあ本当に黒い箱が家にあるだけで、心底邪魔だったりする。

が、電気屋さんは抜かりは無かった。何とソフトも持ってきてくれてるのだ!!

何て素晴らしい電気屋さんなんだ!!ありがとう!!

「男の子は格闘ゲームが好きやからな。格闘ゲーム持ってきたんや。」

格ゲー!!はい来ました!!絶対スパⅡX!!ナイスチョイス!!

あ、いや待てよ、カタログ見てたらサムライスピリッツもあるじゃないか!!コレは2択や!!贅沢すぎる2択!!

そして電気屋さんが取り出したソフトは…!!

………ウェイ・オブ・ザ・ウォーリアー?

…何だコレ。………本当に何だコレ!?

見たことも聞いたことも無いソフトが出てきたぞ!?

何か凄い原産国:アメリカみたいなパッケージしてる謎のソフトが我が家にやってきた。

しかし子供は怖いもの知らず。どんなゲームかワクワクしてパッケージ裏を覗くと…

【血が出る!首が飛ぶ!内臓が転がる!】(原文ママ)

見てはいけないモノを見た気がした。

初めてエロ本を読んだ時の100倍は絶対見てはいけないモノを見た感覚がそこにはあった。

「ホンマはそのゲーム、16歳未満はプレイ禁止やねんけど、こっそり持ってきたんや。」

いや、そんなもん持ってくるなよ!?こっちは小学生だぞ!?

何だよ『血が出る!首が飛ぶ!内臓が転がる!』って!?内臓って転がるのかよ!?

そんな事を考えていた。
パッケージ裏には既に全身が溶鉱炉で溶けたガイコツが画面に張り付いてる写真が載っていたりで、漏らす寸前だった。

ゲーム内容は当時アメリカでは鬼のように湧いていた実写取り込み2D格闘ゲーム、所謂モータルコンバットクローンと呼ばれる作品だった。

兄は嬉々として、俺はビクビクしながら起動する事になった。

果てしない長さのロードに耐えたあと、とりあえずCPU戦を遊んでみる。

キャラクターは逆切腹!と叫んで腹を切ってくる『ニンジャ』や、サングラスの侍『ノブナガ』、インターネット知らずに命は無い!と意味不明なセリフを話す拳法家『ドラゴン』、神の愛人『ニッキー・チャン』、両手に持った扇子で空を飛ぶアメリカ人『コウノトリ』、バーベキュー!!と叫んで串刺しにしてくる『シェイキー・ジェイク』、必殺技のステロイドブーストでドーピングしてくる『ゲインズ大佐』など、まぁメチャクチャです。

ちなみにゲインズ大佐は『大佐』までが名前です。ハート様みたいなもんです。

ニッキーに至っては何で愛人なんて設定なんだよ。俗物過ぎるだろ神様。オリンポスの神々かよ。

プレイしてみると、確かに血は飛ぶ。そりゃもうドバドバ出る。試合前に出血多量で死ぬだろコレってぐらい出る。

しかしコレと言っておかしな部分は特に無い・・・と思ってたらいきなり即死攻撃を喰らって身体が真っ二つになってました。

このゲームはピヨッてる時はいつでもフェイタリティ(残虐必殺技)で即死させれるようです。目の前の大惨事に俺号泣。

そりゃそうだ、小学生がいきなり自分の操作キャラが真っ二つになって内臓が見えてる状態で泣かない訳が無い。

大丈夫やからと兄に寄り添ってもらいプレイを続ける事に。新種の拷問か何かとさえ思える。何で俺にやらせるんだ。

何度も何度も真っ二つにされたり、頭を爆発させられたり、バックブリーカーでへし折られたりしながらもコンティニューを続けていく(ゲーム自体は極悪難易度)

そして全てのキャラクターを倒した!!ついにエンディングだ!!やっと解放される!!

そう思ってた矢先に、『チャンピオン達を倒し、栄冠を手にしろ!』的な事を言われる。

あー、四天王的な人達か・・・もうここまで来たからにはクリアしてやる!!最初の相手は誰だ!!もう怖くないぞ!かかってこい!!

そこにはターバンを巻いたブリーフのみを着用した満面の笑みのインド人が居た。

ヤバい。

子供ながらに直観でわかった。

本気でヤバい。

今までのどんな状況よりも恐怖がこみ上げてくるのがわかった。

何でブリーフ?何で半裸?何で笑顔なの?

恐る恐る勝負を挑むも、今までの敵とは比較にならない強さを誇るボスのクラブ・ジャムーン氏。ただの変態では無かった。

奮戦するもピヨってしまい、フェイタリティを決められてしまう・・・

フェイタリティは「ヴェ!ヴェ!ヴェ!」と呻きながら頭を擦ると破裂するって技でした。

限界だった。

これ以上続けると発狂するのが子供ながらにわかった。

この頃の俺にとってはクトゥルフの数百倍、この半裸のインド人が恐怖の対象だった。

以来、俺の中での3DOの立ち位置は【人殺しをする悪いソフトのハード】と言う形になってしまった。

この頃、後に救世主が現れるなんてのは思っても居なかった。

余談ですが、この『ウェイ・オブ・ザ・ウォーリアー』を作った会社は後に『クラッシュバンティクー』『ラストオブアス』『アンチャーテッド』を発表し、世界に名をはせたノーティードッグです。

続く

著者・クッパ

The following two tabs change content below.

あわせて読みたい

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です